|
13.菊池組と過去 翌日の昼過ぎに俺は診療所に行った。 おやっさんはいつものように、俺の腕をマッサージしたりしている。 「お前。最近、彼女が出来たんだってな?ちょっと有名になってるぞ」 歌舞伎町では、噂は面白いようにすぐに広まる。 東龍組の東郷を土下座させた事で、俺は以前より有名になっているから余計だ。 「この力・・・その彼女のためにあまり使うなよ」 「・・・わかってるよ」 おやっさんはフッと笑い、終わりにした。 診療所を出て歌舞伎町内を少しふらついてから、いつもの喫煙所に行った。 タバコを吸いながら歩いている人達を見ると、早い時間帯のせいか夜と違った風景が目に映る。 すると哲が俺の前に現れた。 「お前・・・今日、仕事はどうしたんだ?」 「今日は仕事さぼりっす(笑)」 そう言って笑いながらタバコを吸いだし、哲は俺に彼女が出来たと噂が立っていると言ってきた。 俺が苦笑いをしてその噂は少し前に聞いたというと、今までそういう話しを聞かないから嬉しいと言っ て笑っている。 「あ、そうだ・・・東龍組が警察に呼ばれたって聞きましたけど、あれからどうしたんですか?」 「ん?あ~俺を探してるってやつだろ?もう解決したよ(笑)」 言うと哲は良かったと言って笑っている。 この後、俺は哲と別れて一旦、家に帰る事にした。
家に帰ると麻衣は起きていて、スマホをいじっていた。 飲み物を取って隣に座ると、麻衣はそっと寄り添ってくる。 麻衣は同棲していても、俺に対して自由でいいと言っているからか、行動に対して何も言わない。 俺は何をするとかもないため自由にしろと言われると、どうしていいかわからないのが本音だ。 麻衣と一緒にいると何も考えずにいられる。 テレビを見ながら麻衣と話していると、近藤から電話が来た。 『佳悟か?お前、またどっかで何かしたか?』 『え?何もしてないっすけど』 近藤が言うには、また誰かが俺の事を探していると言う。 『またですか?』 『聞いただけだから確信がないけどな。まぁ、気を付けろよ?』 そう言って近藤は電話を切った。 「どうしたの?」 「ん?なんか・・・俺の事を誰かが探してるって」 麻衣は心配してきたが、俺は笑いながら気にする事じゃないとか言って笑っていた。
夜になり、俺は麻衣をお店まで送って行き、俺はいつものように街を歩いていると、何か見られてい る気配を感じた。 周りを見ると人が多く、探すのは難しい。俺はタバコを吸いに喫煙所に行った。 タバコを吸っていると、俺の後ろに2人の男が来た。 気にせずタバコを吸っていると、後ろから耳元に声をかけてきた。 「ちょっと来てくれるか?」 そう言って俺の腰に何かあたった。 そのまま言われた通りついていくと、駅前の地下駐車場に連れて行かれた。 「お前。小暮佳悟言うんやろ?」 (関西弁?) 「・・・だから何?」 そう言って男の方を見ると、俺の腹に拳を入れてきた。 「ぐっ・・」 「探したぞ。お前には死んでもらうわ」 そう言われて胸元を掴まれた時、俺は腕を払い男の顔を殴った。 「お前らなんなんだ?」 言うと男2人は小刀を出してきた。 俺は無意識に数珠を外した。 男達は容赦なしに襲ってきたが、それをかわしながら確実に殴って行き、1人を捕まえ右腕で顔や腹を 殴って行くと男はその場に倒れる。 スーツの胸元についているバッチを見て、ヤクザだとすぐわかった。 俺はバッチをむしり取ると、もう1人の男が俺に襲い掛かった。 かわして殴り、背負い投げで男を投げ飛ばすと車のボンネットに男は叩きつけられ気を失った。 数珠をはめて歩きだすと、俺の腕に激痛が走った。 「くそっ・・・」 そのまま歩いて行き、外に出たが激痛は止まらない。 物陰に隠れ、しゃがみこんで痛みが治まるのを待った。
しばらくして激痛がおさまり、俺は立ち上がって喫煙所に歩いて行った。 タバコを吸いながら、俺は関西弁のヤクザの事を考えていた。 ポケットからむしりとったバッチを見ると、ある事を思い出した。 (沙織さんと大阪に行った時に襲ってきたヤクザもこのバッチだったような・・・確か菊池組だった な・・・なんで俺を?) この時、俺は過去に大阪に行った事を思い出してみたが、思い出したくても記憶が蘇らない。 俺は家に何か解るものがあると考え、麻衣に先に家に帰る事をLINEして家に帰る事にした。
家に帰ると、俺はある部屋に入った。この部屋は死んだ親父の書斎だ。 両親が他界してから莫大な量の遺品等や、俺自身の物を全部この部屋にしまい込んでいる。 俺は両親を亡くなるまでの間は、ほとんど一緒に住んでいなかった。 ただ、微かに残っている記憶の中に、親父がマンションの最上階を買い占めて改装し、親子3人で住み たかった事は覚えている。 そして交通事故で両親が亡くなり、俺はこのマンションに住むようになった。 その時、遺品等は捨てられなくて、この部屋に全部しまっていた。 改めて見るとすごい量だったが、俺はこの中に無くなった記憶を見つけられそうだと思い、無意識に大 阪の記憶。菊池組の関係等を探し始めた。 しばらく探していると、建築業界の7つ道具と言うのだろうか、箱に入っているのを見つけた。 俺は見ながら親父の事を考えた。 「確か・・・建築の仕事してたな・・・」 この2年位、親の事を考えてなかった。 そして記憶に微かに残っている親父。 俺は工具類を取り出してみると、箱の奥に日記帳のようなのが大量に入っていた。 1冊取り出して見てみるとスケジュール帳だった。 見てみると、始まりは会社を設立した時からがスタートのようで、空白が無いくらい密に書いてある。 親父はがむしゃらに仕事をしていたのだろうか。 1ページ1ページ確認するように見て行くと、おふくろと出会って結婚するまでの事も書いてあり、俺 が生まれた事も書いてある。 スケジュール帳を見ながら、俺は今までの事を思い出してみた。 子供の頃に大きな家に住んでいる記憶が微かに思い出したが、一緒にいる記憶がほとんどなかった。 代わりに、誰かが俺の面倒を見てくれていたような記憶がある。 住んでいるマンションも、引っ越しをしてきて少し一緒に住んでいたが、俺が家に寄り付かなくなった。 「そういえば・・・親父達の葬式・・・してない」 今考えるとこの家には仏壇や遺影すらなくて、葬式は誰がしたのかもわからない。 そして遺産を巡り身内が接触するのもなかった。 俺は周りを見て、大阪の記憶や菊池組に関して探しているのを忘れ、両親の事を探し始めた。 置いてある箱には、中に何が入っているか書いてあるのもあり、めぼしいのはリビングにもっていった りして、それ以外はその場で確認して行った。 そしてある程度してからリビングに行き、置いた箱をかたっぱしに広げて中を取り出して見て行き、そ して途中で見終わった親父のスケジュール帳をまた見始めた。
|