つぐみ






 季節は12月。秋から冬に入り、街はクリスマスの景色が目立つようになってきた。

そんなある日の日中。東京のマンモス駅、新宿駅東口前にひと際目立つ女性が1人、スマホを見ながら

周りをキョロキョロしながら立っていた。

彼女は、SNSで人気ライバーの「つぐみ」だ。

「あの・・・つぐみちゃん・・・ですよね?」

「あ。やっほ~」

つぐみは笑顔で小さく手を振りながら、挨拶をしてきた。

声をかけてきたのは、某配信サイトで動画配信もしているつぐみの所にアクセスしてくる、リスナーのやっちん。

本来なら、ライバーとリスナーがリアルに会う事がサイトの規定上、禁止になっているが、何度もつぐみが

運営側と協議をした結果、自分への推しをしてくれていて、尚且つ上位のランクにいるリスナー達限定で

抽選を行い、当選した1名のみが1日だけ特例で会う事が出来る企画が動きだした。

やっちんは今回の企画の当選者。

2人は会う前に、電話で直接予定等を打ちあわせをして、今日はその日だった。

「写真より格好いいんだね。驚いちゃった(笑)」

やっちんはつぐみに、この日の為に顔写真を送っていた。

「つぐみちゃんも・・・マスクなしの顔初めて見るけど、すごい可愛よ」

つぐみが配信しているサイトは、配信者はマスクをしての配信になっているから、やすの反応は素直な

反応だった。

2人はお互い照れだし、笑う。

「じゃあ、いこうか?」

「うん。ねぇ。その・・・やっちんって、本名はなんて言うの?私は・・・本名とか言えないんだけど、

よかったらその」

そう言ってきて、やっちんはフッと笑った。

「うんいいよ。じゃあ、やすでいいかな?やっちんって昔のあだ名なんだ(笑)」

「うん。ありがと。今日は、デートだから恋人みたいにいこ?」

ニコニコしながらそう言って、腕を組んでくる。

やっちんは照れだしたが、素直に受け入れた。

 

 

 2人は人ごみに紛れながら、腕を組んで歌舞伎町方面に歩いていた。

やすの腕に、つぐみの胸の感触が伝わる。

つぐみを見ると、やすを見てニコッとする。

2人が向かった所は、歌舞伎町にある屋上にゴジラがいるTOHOシネマズだった。

つぐみが配信の時に、見たい映画があると言っていた事で、今回映画も見る事になっていた。

やすは事前にチケットを購入していて、それをつぐみに1枚渡すと、驚いたが笑顔を見せる。

そのまま館内に入り、飲み物とかを購入していく。

指定の座席に行き上着を脱ぐと、つぐみは大き目な肩だしのニットセーターを着ていて、

ブーツをはいているがミニスカートだから綺麗な足が視界に入る。

座席に座ると、つぐみは楽しそうにパンフレットを見始め、やすはそれを見てニコニコしていた。

そして上映時間まで2人でパンフレットを見ながらくだらない会話をしていた。

 

 

映画はラブコメ的な内容の映画だ。

つぐみは真剣に見ていて、やすも画面にくぎ付けになっていた。

そして終盤に入った頃、つぐみの手がやすの手の上にそっと置かれる。

つぐみをみると、やすを見てニコッとし、そのまま手を膝の上に置く。

ストッキングをはいてないからか、肌が直にわかる。

「つぐみちゃん?」

「もう・・・ちゃんはいらないの。配信の時にやすが言ってるように、つぐみでいいんだって(笑)」

そっと耳打ち際でつぐみが言ってきて、やすの手をスカートの中に導く。

やすは何も言えずにいて、つぐみは腕を強く組んでやすの手を更にスカートの中に入れて行った。

「ねぇ?そのまま触って?」

「え?う・・・うん」

やすが内太ももをなぞりだすと、つぐみは更に強く腕を組んで、下を向いた。

そして、微かに息が荒くなってきてるのがわかった。

手を更に動かしていくと、つぐみの足が少し開く。

そのまま動かしていくと、指先が何かにあたる感触がして、つぐみを見るとつぐみもやすをじっと見る。

「やめないで」

映画の音量が大きいが、つぐみの声が微かに聞こえる。

指先には微かに湿った感触。

腕にはつぐみの胸の感触が伝わる。

この時、やすの鼓動は激しくなっていた。

周りには気が付かれないようしているが、どのタイミングでバレるかもわからない。

2人は下を向いたままでいた。

そして、映画はエンドロールが流れ、帰りだす客がちらほら出始めた。

2人は静かに離れ、つぐみはスカートの乱れを治し始める。

やすは何も言えずに、いつでも動けるようにしだした。

そして映画も終わり、何も言わずに腕を組んで2人は外にでると、外はだいぶ暗くなっていて、時計を

見ると18時は過ぎている。

周りは人も多くなっていて、段々と夜の歌舞伎町になってきていた。

「あの・・・お腹空いてないかな?」

「え?あ・・・うん」

やすは連れて行きたいお店があると言うと、つぐみはニコッとしてうなずいた。

そのまま大きな通りに移動して、タクシーに乗り新宿駅の西口に向かった。