腕に傷を持つ男



 ~あらすじ~

あてもなく歌舞伎町をさまよう「腕に傷がある男」がいた。

その男は断片的な記憶がないが、腕には不思議な力が宿っていた。

ある事がきっかけで、無くなった記憶を探していき、やがて恋人や周りの人を巻き込む大

きな事件と発展していく。

そして全て解決したと同時に、人生が大きく変わっていく。






 ~登場人物~

小暮佳悟   腕に傷がある男と呼ばれている。

       人には言えない不思議な力を持っている。

       断片的に記憶がなく、歌舞伎町をあてもなく彷徨う。  


立花麻衣   キャバクラ
No1のキャバ嬢

       小暮佳悟と出会い、そして2人でいろいろ体験していく。


近藤     歌舞伎町近くの警察署にいる刑事

       小暮佳悟を心配してか、気にかけたりしている。


河合沙織   弁護士。

 小暮圭祐を仕事でたまに利用したり、身体を求めてきたりしている。


小暮甚八   佳悟の父親


佐々木道成  親父の会社で顧問
をしていた。

       立花麻衣の父親


哲      小暮佳悟の舎弟と本人が言っていて、小暮佳悟に変になついでいる男。






 ~一部ストーリー~

新宿の歌舞伎町に、腕に傷を持つ男と呼ばれている男がいた。

「小暮 佳悟」。23歳。

現在は仕事もせず、夜になると東京都心にある歓楽街で有名な歌舞伎町に、飲みに行ったり、女遊びも

せずに、何の目的もなく、ただ彷徨っていた。

喧嘩やいざこざがあると不思議と仲介に入ったりして、はたからみればお節介な奴だと思われたりする

が、不思議とそう思われてないのか、歩いていると声をかけてくる人も多くいた。

歌舞伎町内ではイケメンだとか言われ、何を目的なのか知らないがよく声を掛けてきて誘ってくる女性

もいたりするが、相手にしないでいる。

そして腕の傷も含め、俺は歓楽街ではちょっとした有名人だった。

 

 

21歳の時、交通事故で大怪我をして生死を彷徨い、同時にこの事故で両親を亡くしている。

そしてこの時に俺の記憶が断片的に無くなり、右腕に大きな稲妻のような傷跡だけが残った。

親の残したタワーマンション最上階の家と、仕事をしなくても大丈夫なくらいの莫大なお金があり、車

もベンツSLGT-Rを所有。

住んでいる家は、マンション最上階の2戸を親父が購入。改築して住んでいたが、今になって1人で住むに

は広すぎて、改築をして元の
2戸に戻して1戸を賃貸用の部屋を作り。その家賃収入があった。

そんな俺には人には言えない不思議な力を持っていた。

 

 

 ある日の夜。季節も春になり過ごしやすい季節になっていた。

俺はいつものように夜になると、歌舞伎町内をフラフラしていた。

午前0時が過ぎ、家に帰ろうとパーキングで清算をしていると、1人の女の子が誰かから逃げるように

走ってきて俺の所に来た。

「あの・・・助けてください」

女の子は通りの方を見て俺の陰に隠れる。

通りの方を見てみると、男2人がキョロキョロしながら歩いていた。

俺はそのまま車に連れて行き、助手席に乗せると、女の子は身をかがめて見えないようにする。

車はスモークが貼ってあり、夜なら車内は見えにくい。

様子を伺いながら見ていると、男達は何処かに行ってしまった。

「もう大丈夫じゃない?」

女の子は目に涙をためながら下を向いていて、よく見ると足に擦り傷ができている。

俺はサイドボードから、テッシュと絆創膏を取りだした。

「足・・・血が出てるよ・・・これ使って?」

「あ・・・すいません・・・ありがとうございます」

何で追いかけられていたのか聞くと、女の子の手が止まりまた泣きだした。

 

  

少し沈黙があり、女の子は俺を見て話しだした。

居酒屋で女友達と2人で飲んでいた時に、しつこくナンパされて困っていて、お店のスタッフに助けて

もらったが、お店を出て帰ろうとした時に待ち伏せされたと言う。

「ん?一緒にいた友達はどうしたの?」

聞くと、俺を見てまた泣きだす。

「私・・・怖くて・・・逃げたんだけど・・・友達が」

俺はため息をつき、窓を開けてタバコに火をつけた。

(面倒なのに巻き込まれたな・・・)

女の子を見ると泣いている。

「じゃあ、捜すの手伝ってあげるから・・・行こうか?」

そう言ってタバコを消して車から降りると、女の子もおりてきた。

一緒に歩いて行くと、女の子は周りを気にしてビクビクしていて、腕を組ませると驚いた顔をしてきた。

「こうすれば少しは大丈夫でしょ?」

言うと、女の子はうなずき、俺に寄り添うように一緒に歩きだす。

しばらく探し回って、俺は1人のキャッチをしている男を呼び止めて、女の子に友達の特徴を言わせる

と、1時間くらい前にカラオケに入って行ったのを見たと言って、カラオケ店を指さした。

「なんか、女の子は泣いてたように見えたけど・・・」

俺は女の子に助けてくるからここにいるようにと言い、男に一緒にいてほしいと言って1万円を渡した。

カラオケ店に入っていき、受付の店員に聞くと知らない顔をしてきて、俺は胸ぐらを掴んだ。

「おい。しらばっくれてるとボコボコにするぞ」

脅すと、店員は震えた声で部屋の番号を教えてきた。

部屋に行き、ドアの隙間から中を見るとさっきの2人と、スーツを着たチンピラ風の男がいて、女の子

をレイプしようとしているのが目に入った。

俺は右腕の数珠を外し、勢いよくドアを開けて1人の男の襟首を掴み後ろに突き飛ばした。

男は壁に身体ごと打ち付けられ気を失う。

「お前ら何してんだ!」

「なんじゃいこら!!」

男2人は俺を睨んで殴ってきて、部屋は狭かったが俺は気にすることなく男達を殴っていった。

 

 

 右腕にしている数珠。これを外すと俺の右腕に不思議な力が出て、使い方では人を殺す事も出来る。

これは交通事故以来、身についた不思議な力だ。

最初は戸惑いや抵抗を感じていたが、昔からつけている数珠をしていると不思議と何も起こらない。

俺はこの力を逆に利用できないかと試行錯誤をして、いろいろ出来るようになった。

だが、この力は使い方や時間によって、腕に激痛が走りだして動けなくなったりして、痛みに耐えなけ

ればならない困った力でもあった。

 

 

 俺が1人の男の顔に1発殴り、腹に拳を入れると、男はその場に倒れこんだ。

スーツを着ている男は驚いて逃げようとしたが、倒れている男を右腕で簡単に持ち上げ、男に投げると

重なるようにドアを壊して廊下に倒れ、男を殴ると白目をむいて気絶した。

数珠をはめて女の子の所に行くと、女の子は泣きながら俺に抱き着いてくる。

「大丈夫?」

聞くと、俺の胸元でうなずく。

ソファーに座ると、俺の右腕に激痛が走った。

(くそっ・・きたか)

今回は長い時間使っていないから我慢出来るだろう。

俺はスマホを取り出して、ある人に電話をした。

『あ、近藤さんですか?佳悟っす。あの・・・今レイプされそうになった子を助けたんですけど・・・』

『あ?レイプ?被害者は無事なのか?それより・・・助けたって事は・・・お前、力使ったのか?』

電話の相手は、歌舞伎町近くにある警察署の刑事だ。

俺が記憶を無くした原因の交通事故以来の付き合いで、俺の力の事を知っているせいか何かあれば俺に

「力を使ったのか?」と聞くくらい気にしてくれている。

『あ・・・ちょっと(笑)でもすぐに終わったんで・・・このまま消えます。女の子は無事です』

そう言って場所を教えて、俺は電話を切った。

少しして痛みが消え、俺は女の子に外で友達が待ってると教えて一緒に外に出て行った。

外で友達の子に合うと、2人共泣きながら抱き合っている。

見ていると遠くでパトカーのサイレンが聞こえてきた。

「この後、警察が来ていろいろ聞かれると思うけど・・・俺はこのまま消えるから・・・」

「あの・・・ありがとうございます」

2人は俺にお礼を言ってきて、俺は気にしないでいいと言って、その場から去っていった。

 

 

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